ドゥニ・ヴィルヌーヴ『メッセージ』@MOVIX京都
ポルトガル語の授業中、複数の携帯電話がその役割を果たすべく耳に留まる音で持ち主らに何かを伝えようとし、主人公が背後の戸を引くと教室の広さに対しそれ程大きくはないブラックボックスが姿を現す。そうして物語は幕を開けた。浮遊物との僅かな隙間、半透明の壁の厚み、未来との距離、イアンとの距離、国同士の隔たり。頼りない斥力だか引力だかが平たい画面に凹凸をつくるのがたのしい。音楽は『悪童日記』『博士と彼女のセオリー』などヴィルヌーヴ以外の作品にも参加しているヨハン・ヨハンソン。主人公の前に空想のエイリアンが現れるシーンで再現される鳥の鳴き声、のような甲高い音響は大変耳触りが良く、その他の音楽も映像との距離が程よい。音には映像を引っ張る力が、ある?時間軸に気がついたとき、涙腺が緩んで困った。過去の記憶に支えられている決められた未来を生きることでしか、今を、そしてその未来を救えないなんて、残酷だけど人生ってそういうものなのかもしらん。主人公が中国の上将に伝えた言葉は「In war there are no winners, only widows.」と、某ブログで。